政策アセットミックス
連合会では、政策アセットミックスを最も重要な投資政策と位置づけ、政策アセットミックスを中心に年金資産の運用とリスク管理を行なっています。
政策アセットミックスは、長期的な観点から策定しており、不確かな短期的な市場見通しに基づいて変更することはありません。しかし、一方で市場の変動に伴い年金資産が増減し年金債務との関係が変化します。年金債務に対しどれだけ年金資産が積み立てられているか、その状況によって、年金資産運用のリスクの取り方も変わってきます。この積立状況を「積立水準」といい、年金債務に対する年金資産の割合として把握することができます。
連合会では、積立水準の変化に応じて運用のリスクを調整することとし、5段階の積立水準に応じた政策アセットミックスを設定しています。積立水準が上昇すれば、それに応じて運用リスクの高い株式の比率を下げていき、その後の市場変動の影響を低め、積立余剰の状態をできるだけ安定して維持させていこうという政策です。
この考え方は2007年から取り入れていますが、2010年8月から、これまでの実績を踏まえ、新たな分析モデルを導入し、積立水準に応じた政策アセットミックスのブラッシュアップを図りました。
詳しくは、政策アセットミックスの見直しについて(PDF形式/402KB)をご覧ください。
積立水準に応じた政策アセットミックスの基本的な策定方法は、将来の各資産のリターンとキャッシュフローの予測値から多期間にわたる様々な状況に基づく積立水準を推計し、ダウンサイド(下方リスク=積立不足)にも耐えられるポートフォリオを積立水準のレベルごとに事前に設定しておき、市場の変動等により積立水準が変化した場合は、その水準に応じた資産配分に自動的に変更していくというものです。
これは、基本方針に定める運用目標「積立不足になる確率を極小化すること」を達成させるために検討して、採用した方法です。
定量分析
政策アセットミックスを策定するために、まず定量的な分析を行ないます。連合会が使用している定量的モデルは、ダウンサイドリスク・モデルです。ダウンサイドリスクとは、ある基準を下回るリスクのことで、連合会では積立不足になる確率とその大きさをダウンサイドリスクと定義しています。
積立不足になる確率とその大きさ(ダウンサイドリスク)が最も小さくなるようなポートフォリオ(資産配分)を導き出すのが、ダウンサイドリスク・モデルです。
定性判断
定量分析の結果は、そのモデルに入力したデータなどが正確であるという前提の基で正しい答えとなりますが、実際に入力したデータが完全に正確であるという保証はありません。したがって、モデルの結果を盲信することはせず、定量的な分析に加え、定性的な判断を政策アセットミックスの策定においては重視しています。
連合会が管理する年金資産は、10兆円近い巨額の資産です。定性判断においては、特にこの資産規模に配慮しています。資産規模が大きいということは、規模の経済が働き有利な面もたくさんありますが、資産の売買では、自らの取引で価格を不利な方向に動かしてしまうリスク(マーケット・インパクト)をはらんでいます。積立水準に応じて資産配分を変更する政策においては、このマーケットインパクトに対し慎重に対応しなければなりません。そこで、モデルの結果を踏まえつつ、マーケットインパクトが発生しないよう定性的な判断で修正を加えています。
チェック
積立水準に応じた政策アセットミックスを最終決定する前に、市場が大きく混乱したときにどの程度積立水準が悪化してしまうのか、どの程度までの市場暴落が起きても耐えられるのか、などの確認を行います。これをストレス・テストといいます。
ストレス・テストでは、過去に起こった大きな混乱状況や、過去に起こったことも無いような大きな混乱時にどこまで積立水準が悪化してしまうのかをシミュレーションし、ダウンサイドリスクに対する耐久性をチェックしています。
管理
連合会では、積立水準に応じた政策アセットミックスの政策を実効性あるものとするため、毎日、前日の積立水準と資産構成割合を把握し、必要に応じ資産配分の調整を行ないます。これをリバランスと言います。実際のポートフォリオは市場の変動とともに資産構成割合が変化してしまうので、これを一定の範囲内で調整していくのがリバランスです。
連合会の場合、積立水準に応じて政策アセットミックスを変えていきますので、積立水準の変化により政策アセットミックスを変更するためのリバランスも必要となります。そのために、日次で積立水準の推計を行なっています。
連合会の資金規模では、1%の調整でも約1千億円の売買が生じます。この規模の売買を1日で執行することは困難です。これをマーケット・インパクトを避けながらスムーズに行なうためには、タイムリーかつ迅速に状況を把握し、必要に応じて早めに実行に移す必要があります。そのために、毎日状況把握を行い、必要なリバランスは内部のインハウス運用を最大限に活用し柔軟かつ機動的に行ないます。
<参考1>ダウンサイドリスク・モデルの具体的な分析方法(平均下方積立水準多期間最小化)
- 積立水準を基準にして、積立不足率(1−積立水準)を最小化する、つまりは積立水準の下方乖離(積立不足の状態)を重視した多期間最小化モデルでポートフォリオを導出します。
- 将来のリターンデータとして、10年分のリターンをそれぞれ1万通りモデルで発生させ、それぞれのリターンデータと将来キャッシュフローから資産額と負債額を計算し、合計10万個の積立水準を算出します(多期間)。
- 積立余剰の場合は「0」とし、積立不足の場合のみ積立不足率を計算し、10万個の平均が最も小さくなるポートフォリオを最適化計算により導き出します。
- リターンデータは、ファット・テールや系列相関の影響なども反映できるよう、過去データの分布を使った移動ブロック・ブートストラップ法により発生させています。
さらに詳しくお知りになりたい方は、政策アセットミックスの見直しについて(PDF形式/402KB)をご覧ください。
<参考2>過去の政策アセットミックス
連合会では、1996年4月から、自らの責任と判断で、リスク許容度に応じた政策アセットミックスを策定し、リバランス、検証、見直しを行ってきました。それまでは、資産構成割合に関する規制があり(安全性資産50%以上、株式30%以下、外貨建資産30%以下、不動産20%以下)、自らの資産構成割合を決定できる余地は限られていました。
| 積立水準 | 国内株式 | 外国株式 | 国内債券 | 外国債券 | その他 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1996年 | - | 30% | 14% | 38% | 6% | 12% |
| 1999年 | - | 33% | 18% | 42% | 7% | |
| 2002年 | - | 33% | 23% | 37% | 7% | |
| 2007年 | 100%から110% | 23% | 22% | 35% | 20% | |
| 110%から120% | 20% | 20% | 40% | 20% | ||
| 2008年 | 110%未満 | 16% | 24% | 40% | 20% | |
| 110%から120% | 13% | 22% | 43% | 22% |
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